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【相続】遺産分割はまとまったのに、形見分けで揉めていませんか|家族が対立しない遺品・家財の分け方

岡山県で不動産会社を経営している、咲良不動産の畠中です。

実家の相続で、不動産や預貯金の分け方については、家族で話し合いがついた。それなのに、お母さんの着物や、お父さんの時計、古い写真アルバムといった「形見」の分け方になると、なぜか話がまとまらない。そんな経験はありませんか。

その気持ち、よく分かります。不動産の分け方については、以前「兄弟で揉めない不動産の分け方|換価分割という選択」でお話ししました。今日お話ししたいのは、それとは少し違う種類の対立です。

ある家庭では、1億円を超える相続財産の分割は円満にまとまったのに、お母さんの着物と帯をめぐって姉妹の関係がこじれてしまった、という話が、あるコラムで紹介されています。金額の大きさと、揉めやすさは比例しません。むしろ、金額では測れないものほど、家族の感情がぶつかりやすい。それが今日のテーマです。

岡山市や赤磐市、備前市で、実家の片付けや相続のご相談に携わる中でも、形見や思い出の品をめぐって、家族の空気が少しぎくしゃくしてしまう場面を見てきました。なぜこういうことが起きるのか、そしてどうすれば防げるのかについて、お話ししていきます。

なぜ、安いものほど揉めるのか

揉めやすい遺品には、いくつかの共通するパターンがあります。

  • 貴金属・宝石・時計
  • 着物・帯
  • 絵画・骨董品
  • 食器や日用品
  • 写真・アルバム
  • コレクション品

こうして並べると、金銭的な価値が高いものと低いものが混在していることに気づかれると思います。特に、食器や日用品、写真のように、金銭的な価値がほとんどないものまで対立の火種になる、というのが形見分けの厄介なところです。

よくあるトラブルのパターン

  • 同居していた家族や喪主が、他の相続人に相談せず、先に形見分けを進めてしまう
  • 生前に「これはあなたにあげる」と言われたという話が、他の家族には確認できず、言った・言わないの水掛け論になる
  • 「いらない」と言われた品を別の親族に譲ったところ、後になって「本当は欲しかった」という人が現れる
  • 整理の過程で、形見分け予定の品を誤って処分・紛失してしまい、責任の押し付け合いになる

こうしたパターンに共通するのは、対立の根っこにあるのがお金の問題ではないという点です。形見分けは、資産を分ける行為ではなく、気持ちを分かち合う行為です。だからこそ、金額という客観的な物差しが使えません。業界のコラムなどでは、形見分けの対立の背景に、「誰が一番親に大切にされていたか」という、長年の家族関係の延長線上にある感情のぶつかり合いがあることが多い、ともよく言われています。

少し数字も見ておきます。裁判所の司法統計によると、令和4年に成立した遺産分割事件のうち、遺産の総額が5,000万円以下だったものは、全体の約76%にのぼります。相続の争いの多くは、実は高額な財産をめぐるものではなく、比較的少額な遺産をめぐって起きているということです。形見分けの対立は、この統計にも表れないような、もっと少額な場面で起きているのではないか、というのが私の実感です。

形見分けと相続財産は、法律上は別のもの

ここで、法律上の整理を一度しておきたいと思います。実は、形見分けというのは、法律で決まった制度ではありません。昔からの慣習・儀礼です。対象になるのは、原則として、経済的な価値がほとんどない、故人の愛用品や思い出の品です。

一方、現金、預貯金、不動産、株式、宝石、骨董品、貴金属など、経済的な価値のある財産は、原則としてすべて相続財産になります。相続財産は、遺産分割協議の対象です。

  • 形見分け:資産価値のないものを対象にした、気持ちの整理
  • 相続財産:資産価値のあるものを対象にした、法的な手続き

ただ、正直にお伝えすると、この線引きに明確な金額の基準はありません。ケースバイケースの判断になります。「見た目は安物だと思っていたら、実は高価なものだった」というグレーゾーンが、大きなトラブルの要因の一つです。

だからこそ、形見分けは、遺産分割協議が終わった後に、相続人全員の了承を得てから行うのが望ましいとされています。先に分けてしまうと、実は高価だったと分かったときに、協議をやり直す事態になりかねないためです。

気をつけたい、相続放棄と税金のこと

価値のある遺品を独断で持ち帰ると、後から相続放棄ができなくなる場合があります(法定単純承認)。この点は「相続した実家の遺品整理、何から始めればいいのか|費用相場と進め方」で詳しくお話ししていますので、相続放棄を検討している方は、あわせてご覧ください。

また、高価な品を特定の相続人に形見分けすると、贈与税や相続税の対象になる可能性もあります。このあたりは税務の専門領域ですので、詳しくは税理士などの専門家にご相談ください。

対立を防ぐために、今からできること

ここからは、具体的にどうすれば対立を防げるのかを、生前にできること、整理の現場でできること、分け方の工夫、第三者を交えること、の4つの段階に分けてご紹介します。

1.生前にできること

一番確実なのは、本人(親)に「誰に何を譲りたいか」を直接聞いておくことです。そして、口約束で終わらせず、遺言書やエンディングノートに書面で残してもらうこと。口約束だけでは、他の相続人に伝わらず、「言った・言わない」のトラブルになりやすいためです。

生前に「残すもの・譲るもの・処分するもの」を親と一緒に仕分けておく生前整理という考え方については、「生前整理、元気なうちに実家の片付けを家族で話しておく」で詳しくお話ししています。

2.整理の現場でできること

  • 分ける前に、対象になりそうな品を一覧にして、写真に撮っておく
  • 「誰が何を受け取ったか」を、簡単なメモでよいので残しておく
  • 独断で進めず、相続人全員に事前に伝えて、了承を得てから進める
  • 可能であれば、資産価値のある遺産の分割協議を先に終え、感情が入りやすい形見分けは後に回す

同居していた家族や喪主が、先に進めてしまいがちな点は、特に注意していただきたいところです。

3.公平な分け方の工夫

  • ドラフト方式:くじ引きなどで選ぶ順番を決め、1人ずつ順番に欲しいものを選んでいく方法です
  • 役割分担方式:一方が分け、もう一方が先に選ぶ方法です
  • 客観的な価値づけ:専門家に査定してもらい、感情の話を数字の話に置き換える方法です
  • 現金化して分ける:希望が重なる場合、売却して現金で分配するという、換価分割の考え方を形見に応用する方法です

4.第三者を交える

相続人だけで話し合うと、どうしても感情的になりやすいものです。弁護士や行政書士などの専門家、あるいは不動産会社のような中立な第三者を交えると、冷静な話し合いがしやすくなる、と言われています。身内だけでは言い出しにくいことも、第三者がいることで口に出しやすくなる、という効果もあるようです。

話し合いがこじれてしまったときの相談先

ここまでの工夫を試しても、対立が深刻化してしまうこともあります。家族間の話し合いで解決しない場合、弁護士への相談が現実的な次のステップです。

形見分けそのものについて、家庭裁判所に直接申し立てる制度はありません。ただ、対象の品が実は高価で「相続財産」にあたると判断される場合は、遺産分割の問題として、家庭裁判所の遺産分割調停の手続きに進むことになります。調停委員という中立な第三者が間に入り、合意できなければ審判に移行する、という流れです。

形見・思い出の品だけをめぐる対立で、いきなり弁護士や裁判所に相談するのは、大げさに感じるかもしれません。ですが、こじれると、遺産分割協議そのものへの不信につながることもあります。深刻化する前に、身近な相談相手に間に入ってもらう、という選択肢もあります。

まとめ

形見分けには、法律で決まったルールがあるわけではありません。だからこそ、金額の大小に関係なく、家族の気持ちがそのままぶつかり合ってしまいます。生前の意思確認、記録を残すこと、相続人全員の了承を得てから進めること。一つひとつは小さな工夫ですが、対立を防ぐ効果は大きいものです。

実家の整理がスムーズに進んだご家族ほど、不動産の話だけでなく、形見や思い出の品についても、早い段階で話し合いの場を持たれている印象があります。不動産をどうするか(住む・貸す・売る)まで含めて、進め方から一緒に考えることもできます。もし今、実家の整理やご家族との話し合いで迷っていることがあれば、一度ご相談ください。

※本記事は一般的な情報をまとめたものです。相続税・贈与税などの税務や、相続放棄・遺産分割などの法律上の判断は、個別の事情によって異なります。具体的なお取り扱いは、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

この記事の内容について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。

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