【不動産投資】”新築プレミアム”が効くのは、最初の入居者だけ|客付け力を左右する4つの要素とオーナーにできること
岡山県で不動産会社を経営している、咲良不動産の畠中です。
これまで、新築一棟アパート投資について、利回りの見方、物件(木造×地元工務店)の選び方、岡山市のエリアの考え方、融資、サブリース、出口戦略、そして管理会社の選び方と、順番にお話ししてきました。今日はその続きで、「入居者をどう決めるか」という空室対策のお話です。
「物件も良い。管理会社も選んだ。あとは入居者を埋めるだけ」。そこまで来た方も多いのではないでしょうか。そんなとき、こんな疑問が出てきます。
- 新築の最初の入居付けでつまずくと、その後もずっと苦戦するのではないか
- 管理会社に任せてはいるが、本当に頑張って客付けしてくれているのか分からない
- AD(広告料)を積むべきか、フリーレントを付けるべきか提案されたが、妥当なのか判断できない
- オーナーとして、何もしなくていいのか、何かできることがあるのか
その気持ち、よく分かります。今日は「これをやれば必ず埋まります」という記事ではありません。空室対策を精神論にせず、客付け力を4つの要素に分けて、どこまでが管理会社の仕事で、どこからがオーナーとして判断できることなのかを、できるだけ正直に整理します。
「新築プレミアム」とは?なぜ最初の満室化が大事なのか
家賃は、一般的に築年数とともに下がっていく傾向があるとされています。総務省統計局が公表している借家家賃の経年変化に関する調査研究でも、家賃が経年で下がる傾向自体は確認されています。ただし、この資料は物価指数の技術的な調整が中心で、個別の下落率をそのまま引用できる性質のものではありません。民間のメディアでは「毎年1%程度下がる」といった目安が紹介されることもありますが、これも編集部による整理であり、エリアや物件で大きく変わります。
こうした背景として、業界でよく語られるのが「新築プレミアム」という考え方です。新築時点の家賃は、周辺の相場と同じか、やや高めで設定しやすいとされます。ただし、一度退去が出て次の入居者を迎える段階になると、周辺の相場に合わせた見直しの圧力がかかりやすい、という指摘が複数のメディアで共通しています。
もちろん「新築だから必ず高く貸せる」という話ではありません。新築時の家賃水準も、客付けのしやすさも、いちばん高くなりやすいこのタイミングで、最初の入居をどう決めるか。それが、その後の賃料の水準にも影響しうる、というのが今日のテーマです。
岡山市周辺では車で移動する方が多く、新築であっても、駐車場の台数や出入りのしやすさが入居の決まりやすさに影響しやすいと言われます。エリアごとの考え方は、「岡山市内でアパート経営を始めるということ|エリア選びと賃貸需要の考え方」でお話ししています。
客付け力を4つの要素に分けて考える
「客付け力」とは、入居者を見つけて契約まで持っていく力のことです。これは大きく、次の4つに分けられると考えています。
- 相場設定(募集条件)
- 写真・広告文
- AD(広告料)
- 内見のしやすさ
1.相場設定(募集条件)
空室が埋まらない典型的な原因として、「家賃が相場より高い」「入居条件が厳しすぎる」「間取りに魅力が乏しい」といった点が、よく挙げられます。一方で、こうした条件が整っていても決まらないケースがある、という指摘もあります。その場合は、管理会社や仲介会社の営業力・対応力に原因があることが多い、という整理です。つまり、相場設定がすべてではありません。
2.写真・広告文
ポータルサイトの一覧画面では、写真の出来が反響(クリック率)を大きく左右すると、複数の業界メディアで指摘されています。外観は斜めから撮ると奥行きが出やすい、室内は部屋の隅から垂直を意識して撮ると広く見える、収納を写真で明示する、といった工夫が紹介されています。
これは、オーナーが自分で撮影するための指南というより、「どれだけこだわってくれる会社なのかを見極める視点」として捉えてください。募集資料の写真や表現について、管理会社や仲介会社の側から改善の提案があるかどうかは、一つの判断材料になります。
3.AD(広告料)
ADとは、仲介手数料とは別に、オーナーが仲介業者へ支払う広告費用のことです。実務上は「優先的に紹介してもらうための報酬」として機能している、と解説されています。目安としては、賃料の1〜2か月分と語られることが多いようです。物件の競争力によって幅があり、人気の見込める物件では抑えめ、築古や駅から遠い物件では高くなる傾向がある、とされています(あくまで一般論で、エリアや時期で変わります)。
決め方の考え方としては、「ADを出さなかった場合に想定される空室期間の家賃の損失」と「AD費用」を比べる方法が紹介されています。たとえば、過去に2か月の空室が発生していた物件で、家賃2か月分以下のADで決まるなら、費用対効果はプラスになる、という考え方です。
正直にお伝えしておくと、ADは物件そのものの価値を高めるものではなく、あくまで「紹介の優先度を上げる」施策です。多用するとキャッシュフローを圧迫する、という指摘もあります。また、募集資料(マイソク)にAD金額が書かれず、仲介業者の間だけで共有される実務慣行もあり、オーナー側からは相場観が見えにくい構造になっています。
4.内見のしやすさ
近年は、スマートロックを使ったセルフ内見(オンライン予約→スマホで解錠→内見→施錠)を取り入れる管理会社や仲介会社が増えている、と言われています。立ち会いなしで好きな時間に内見できるため、予約が取れずに離脱してしまう機会損失を減らせるとされます。オンライン内見(動画やVRなど)も広がっていますが、最終的には現地での内見が中心で、オンラインは一次スクリーニングの位置づけ、という見方が一般的です。
オーナーとして確認できるのは、「内見の予約から実施までのスピード」「土日・夜間の対応」「スマートロックなどの仕組みの有無」といった点です。
オーナー自身が判断・実行できること
ここが、今日いちばんお伝えしたい部分です。
日常管理の質を確認し、要望する(費用ゼロ〜低コスト)
賃貸の現場では、「入居の判断の多くは、現地に着いた瞬間の第一印象で決まりやすい」と語る実務者もいます。これは学術的な検証データではなく、実務経験に基づく見解です。そのうえで改善のポイントとして挙げられるのが、共用部の清潔感、外観・入口の明るさ、においや雰囲気です。オーナーとしては、次のような確認ができます。
- 共用部の清掃の頻度、電球が切れたときの対応のスピードを管理会社に確認する
- 退去後、内見の前に簡易清掃が入っているかを確認する
費用をかけなくても、確認する・要望するだけでできることがある、ということです。
設備投資の優先順位を、管理会社と一緒に考える
設備投資には段階があります。低コストでは照明のLED化、宅配ボックスの後付け、インターネット無料化など。中コストでは部分的な設備の更新や、ペット可への条件変更。高コストでは水まわりの全面リフォームなどです。新築の場合は大規模なリフォームの出番は少ないため、まずは低コストの付加価値から検討するのが現実的です。
インターネット無料は、長く人気設備の上位でしたが、設備として一般化したことで、差別化の効果が薄れてきたとも言われます。「付ければ必ず家賃が上がる」わけではなく、差別化の効果は年々変わりますので、最新の傾向を管理会社や仲介会社に確認してみる価値はあります。
ペット可についても、対応する物件が増えてきた一方で、周辺相場より家賃を上乗せできるかどうかは、事業者によって見立てに幅があります。原状回復の費用の増加や近隣トラブルのリスクも伴いますので、「需要が増えるから無条件に有利」とは言えません。
賃料の設定・条件の変更を判断する
一度下げた家賃は、募集サイトや仲介業者を通じて市場に定着してしまい、簡単には戻せない、という論点があります。値下げが「新しい基準」として認識されると、入居者の期待値が変わり、同じ物件内の家賃のバランスも崩れてしまうおそれがあります。
家賃を下げずに、実質的な条件を良くする手段としては、フリーレント、AD、初期費用の減額(敷金・礼金の見直し)があります。たとえば、家賃7万円の物件に1か月のフリーレントを付けて1年契約とした場合、1年間で受け取る賃料は7万円×11か月=77万円で、月あたりに均すと約6.4万円相当になります。見かけの家賃は保ったまま、実質的な条件で調整する、という考え方です。ただし、実質の収入は下がっていますので、その点も計算に入れて判断してください。
新築の最初の客付けで焦って家賃を下げてしまい、後から相場観のバランスに悩まれた方も見てきました。最初の一手が、その後の家賃の水準を決めてしまうことがある、というのが実感です。
空室対策で失敗しやすいパターン
- 安易な家賃の値下げ:一度下げた家賃は戻しにくく、地域全体で値下げ競争を招く懸念も指摘されています
- 費用対効果を無視した設備投資・リフォーム:たとえば、仮に150万円をかけた工事で家賃が月5,000円しか上がらないとすると、年6万円の増加なので、回収に25年かかる計算になります
- 無計画な入居条件の緩和:ペット可などの緩和は需要を広げる反面、原状回復費用の増加、滞納リスク、近隣トラブルにつながる可能性があります。敷金・保証内容・規約の見直しとセットで検討する必要があります
- 管理会社への丸投げ:問い合わせの数、内見の人数、申し込みまでの進み具合といった数字をオーナーが把握していないことが、空室長期化の一因になる、という指摘があります
管理会社の選び方は、「管理会社は「安さ」で選ぶと後悔しやすい|一般管理を任せる相手をどう見極めるか」でお話ししています。募集の状況を数字で報告してくれるかどうかも、管理会社を見るうえで大切な基準です。
空室対策は、何かをやること自体が目的ではありません。費用対効果とタイミングを見極めることが、遠回りのようで、いちばん確実な考え方だと感じています。
まとめ
- 新築時は、いちばん客付けしやすいタイミング。この「新築プレミアム」が効くうちに、最初の満室化をどう実現するかが大事
- 客付け力は、相場設定・写真と広告文・AD・内見のしやすさの4つに分けられる
- オーナーにできるのは、日常管理の質の確認、設備投資の優先順位づけ、賃料・条件の判断
- 安易な値下げ、費用対効果を無視した投資、無計画な条件緩和、丸投げは失敗しやすい
「今の管理会社の客付けの方針が、この基準に照らしてどうなのか」「ADやフリーレント、設備投資について、自分の場合はどう判断すればよいか」。そうした点が気になる方は、お気軽にご相談ください。資料だけでも構いません。
※本記事は一般的な傾向と業界の目安の整理であり、個別の物件・エリア・時期によって最適な判断は異なります。不動産投資には空室や家賃の下落などのリスクが伴い、必ず満室になることをお約束するものではありません。
この記事の内容について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。



