【不動産売却】「囲い込み」とは?売主が損をしうる仕組みと、自分で確認できる5つのこと
岡山県で不動産会社を経営している、咲良不動産の畠中です。
家の売却を考え始めた方から、こんなご相談をいただくことがあります。「不動産会社に頼んで何週間も経つのに、問い合わせがほとんどない」「『他に検討している方がいます』と言われたまま、話が進まない」。もちろん、単に市場の反応が弱いだけのこともありますが、まれに、その裏に「囲い込み」と呼ばれる仕組みが隠れていることがあります。
この記事では、囲い込みとは何か、なぜ売主さんが損をしうるのか、そして売主さんご自身が確認できることを、できるだけ分かりやすく整理します。特定の会社を批判する意図はありません。仕組みを知っておけば、必要以上に不安にならず、必要なところはきちんと確認できる、というお話です。
そもそも「囲い込み」とは?
不動産の売却を不動産会社に依頼すると、その会社は買主を探します。このとき、売主さんと買主さんの両方から仲介手数料をもらえると、会社の収入は大きくなります。これを「両手仲介」と呼びます(売主・買主どちらか片方からだけの場合は「片手仲介」)。
「囲い込み」とは、売主さんから預かった物件の情報を、他の不動産会社に十分に開示せず、自社で見つけた買主だけに紹介して、両手仲介を狙う行為のことを指します。たとえば、他社から問い合わせがあっても、実際には買主が決まっていないのに「商談中です」と答えて紹介させない、といったものが、囲い込みの典型例として語られます。
念のためお伝えすると、自社で買主を見つけて両手で成約すること自体は、違法ではありません。問題になるのは、売主さんの利益に反して、他社からの買主の紹介を意図的に断ってしまうことです。
なぜ売主さんが損をしうるのか
買主候補が、自社のお客様だけに限られてしまうと、その分だけ、より良い条件で買ってくれる方に出会う機会が減ります。結果として、次のようなことが起こりうると言われています。
- 反響が少ないまま時間が経ち、「価格が高いのでは」と値下げを勧められる
- 本来ならもっと高く売れた可能性があるのに、安い価格で成約してしまう
- 売却が長引き、住み替えのスケジュールや資金計画に影響する
ただし、反響が少ない理由は、囲い込みだけではありません。価格の設定、物件の状態、写真や広告の出来、売り出す時期など、さまざまな要因があります。「反響がない=囲い込み」と短絡的に決めつけないことも、大切です。価格の考え方は「売り出し価格の決め方|”高く出す”が失敗する理由」でお話ししています。
制度としては、どう対策されているのか
不動産会社が売主さんと結ぶ媒介契約には、いくつかの種類があります。そのうち「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」では、依頼を受けた会社は、物件の情報を、指定流通機構(レインズ)という不動産会社どうしの情報システムに登録しなければなりません。登録までの期限は、専任媒介で契約から7営業日以内、専属専任媒介で5営業日以内です。登録すると「登録証明書」が発行され、売主さんに渡される決まりになっています。
また、専任媒介では2週間に1回以上、専属専任媒介では1週間に1回以上、売主さんに活動状況を報告することが義務づけられています。
さらに、囲い込み対策として、2025年1月から、レインズへの取引状況(申込みの有無など)の登録が、法令上の義務として位置づけられたと報じられています。制度の詳しい内容や運用の最新の状況は、国土交通省の公表資料でご確認ください。こうした見直しで、「商談中」と実態が異なる状態が、以前よりも起こりにくくなることが期待されています。ただし、制度ができたからといって、すべての取引で問題が起きなくなる、とまでは言い切れません。
売主さんご自身が確認できる5つのこと
1.レインズの登録証明書を受け取っているか
専任・専属専任で契約した場合、登録証明書が発行されます。届いていない場合は、遠慮なく「登録証明書を見せてください」とお願いしてください。
2.活動報告が、数字で届いているか
問い合わせの件数、内見の件数、反響のあった媒体など、具体的な数字で報告してもらえているかを確認します。「反応は良いです」という言葉だけでなく、数字が出てくるかどうかが一つの目安です。
3.ポータルサイトで、物件が掲載されているか
SUUMOやアットホームなど、一般の方が見るサイトに、きちんと掲載されているかを、売主さんご自身で確認してみてください。他の不動産会社のサイトにも出ているかどうかも、手がかりになります。
4.「商談中」と言われたら、詳しい状況を聞く
「他に検討している方がいます」と言われたときは、申込みが入っているのか、それとも内見だけなのか、といった状況を、具体的に聞いてみましょう。明確に答えてもらえないときは、その会社のスタンスを見極める材料になります。
5.納得できない場合は、他社にも相談する
専任媒介契約には、契約期間があり(最長3か月)、期間が終わったあとは、他社に変更することもできます。契約の途中でも、契約内容によっては相談できる場合がありますので、まず契約書を確認してみてください。
会社を選ぶ段階でできること
囲い込みを心配するより前に、そもそも売却を任せる会社を選ぶ段階で、いくつか確認しておくと安心です。
- 査定額の高さだけでなく、売れるまでの活動の計画(どの媒体に、どのように出すか)を説明してくれるか
- 報告の頻度や方法を、契約の前に確認できるか
- 他の不動産会社からの紹介にも、積極的に対応する姿勢があるか
査定額が一番高い会社を選んだ結果、困ってしまった事例は、「一番高い査定額の会社を選んだ結果」でお話ししています。また、担当者を見極める視点は「宅建士の資格だけでは分からない|”良い担当者”の見分け方」、大手と地元の違いは「大手と地元、どちらが得か|不動産会社の選び方」で整理しています。
よくある疑問
一般媒介なら、囲い込みは起きませんか?
一般媒介契約は、複数の会社に同時に依頼できる契約です。レインズへの登録義務はありませんが、複数の会社が同時に動くため、特定の1社に情報が閉じ込められにくい、という面はあります。一方で、会社によっては「他社にも依頼されている物件は、広告や活動にかける力を抑える」という考え方をする場合もあり、専任契約のほうが力を入れてもらいやすい、という見方もあります。どの契約が向いているかは、物件や状況で変わりますので、媒介契約の種類ごとの特徴を説明してもらってから選ぶのが安心です。
両手仲介は、すべて悪いことなのですか?
いいえ。自社のお客様に物件を紹介して成約すること自体は、通常の営業活動です。売主さんにとって問題になるのは、自社の手数料を優先して、売主さんの利益になるはずの他社からの紹介を断ってしまう場合です。結果として売主さんにとって良い条件で、早く売れたのであれば、両手の取引であっても、問題にはならない場合がほとんどです。
疑いすぎると、不動産会社との関係が悪くなりませんか?
確認すること自体は、失礼なことではありません。「登録証明書を見せてください」「今の反響の数字を教えてください」というのは、売主さんとして当然の確認です。誠実に対応してくれる会社であれば、むしろ丁寧に答えてくれるはずです。
まとめ
- 囲い込みとは、他社の買主の紹介を意図的に断り、自社で両手仲介を狙う行為のこと。自社で成約すること自体は違法ではない
- 反響が少ない理由は囲い込みだけではない。価格・状態・広告・時期なども確認する
- 専任・専属専任では、レインズへの登録と登録証明書、定期的な活動報告が決まっている
- 売主さんは、登録証明書、数字での報告、ポータルサイトの掲載状況を確認できる
不動産会社との関係は、疑い続けるものではなく、信頼できる相手を選んだうえで、確認すべきことを確認していくものだと考えています。売却を任せている会社の対応に、少しでも「あれ?」と感じたら、一度状況を整理するお手伝いもできますので、お気軽にご相談ください。他社で契約中の方のご相談も、お受けしています。
※本記事は一般的な仕組みと制度の説明であり、個別の取引や特定の会社の対応について評価するものではありません。法令の内容や運用は変更されることがありますので、最新の情報は国土交通省などの公表資料をご確認ください。
この記事の内容について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。



