【不動産投資】サラリーマンの属性で、融資はどこまで変わるのか|年収・勤務先・自己資金の見られ方を整理する
岡山県で不動産会社を経営している、咲良不動産の畠中です。
新築の一棟アパート、価格帯としては1億〜3億円くらいの物件を検討し始めた方から、決まって聞かれることがあります。
- 自分の年収で、この価格帯の物件に融資は出るのだろうか
- 勤務先は上場企業ではないけれど、それでも大丈夫だろうか
- ネットで「属性がすべて」という言葉を見て、急に不安になった
- フルローンは今どき無理だと聞いたが、実際どのくらいの自己資金が必要なのか
- 県外に住んでいて、地元の金融機関に相談する伝手がない
その気持ち、よく分かります。今日は「属性が高ければ有利、低ければ不利」という単純な話をしたいわけではありません。年収・勤務先・勤続年数・自己資金という要素が、融資の条件にどう影響しうるのか、業界でどう語られているのかを、できるだけ正直に整理します。そのうえで、属性に自信がない方が検討できる選択肢についても、最後にお話しします。
これまで「利回りの見方」「新築×木造×地元工務店を選ぶ理由」「岡山市エリアの考え方」とお話ししてきました。今日はその続きとして、「では、実際に融資は組めるのか」という、いちばん気になる部分に踏み込みます。属性に自信がないまま相談にいらして、実際には想定より柔軟に話が進んだ方もいれば、年収は高くても思わぬところでつまずいた方もいます。
そもそも「属性」とは何を指すのか
金融機関が個人向けの不動産投資ローンの審査で見る主な要素として、一般的に次のようなものが挙げられます。
- 年収
- 勤務先(業種・規模・上場か非上場か)
- 勤続年数
- 自己資金(頭金)
- ほかの借入の状況・返済の負担率
- 健康状態(団体信用生命保険に加入できるか)
住宅ローンの審査と共通する部分もありますが、不動産投資ローンでは、これに加えて「物件そのものの収益性・担保評価」も審査の対象になります。つまり、金融機関は「個人の属性」と「物件の担保力」の両方を見て、融資の可否や金額を判断している、という整理が一般的です。属性は大切な要素の一つですが、それだけですべてが決まるわけではありません。
年収帯による融資額の目安
まず、多くの方が気になる「年収」から見ていきます。不動産投資ローンの対象として「年収700万円」を一つの基準にする金融機関が多い、という記述が複数のメディアで見られます。一方で「年収500万円以上」を基準とする記述もあり、メディアによってばらつきがあります。借入可能額の目安も、「年収の5〜10倍」とする記述と、「10〜30倍程度まで」とする記述の両方があります。
倍率の幅が非常に広いと感じませんか。正直にお伝えすると、「業界の相場はこの倍率です」と一言で言い切ることはできません。このばらつきをそのままお見せすることが、かえって実態に近いと考えています。年収が低めの方は公庫やノンバンク、中間の方は地方銀行や信用金庫、高めの方は大手銀行も選択肢に入りやすい、という3段階のイメージを紹介する記事もありますが、これは一つのメディアの記述にとどまるため、あくまで一つの目安として捉えてください。
勤務先の「看板」による評価の違い
次に、勤務先です。上場企業、非上場の大手、中小企業、自営業という順で、信用の評価が高くなりやすい、という記述が複数のメディアで共通して見られます。公務員は収入の安定性という理由で、高く評価されやすいとも言われます。ただし、これは「傾向として紹介されることが多い」という話で、「上場企業だから必ず有利」「公務員だから絶対に通る」と断定はできません。古い記事で紹介された職業の序列が、そのまま今の融資環境に当てはまるとも限りません。
興味深い論点として、「勤務先の規模が下がると、年収が上がってもプラスの評価にならない場合がある」という指摘があります。たとえば、大企業から中小企業の役員に転職して年収が大きく増えても、勤務先の安定性が下がるため、審査上はプラスとみなされないことがある、という趣旨です。年収の高さだけでなく、勤務先の安定性も独立した評価の軸になる、という考え方は、意外と見落とされがちです。
勤続年数・返済負担率という視点
勤続年数は、長いほど信用が高まる、というのが一般的な考え方です。ただし、「何年以上あれば有利」という明確な基準が、業界で一致しているわけではありません。返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)も、金融機関ごとに基準が違うため、一律の数字は挙げません。また、携帯電話料金の延滞やキャッシングの利用履歴といった信用情報が審査に影響するのは、不動産投資ローンに限らず、ローン審査全般の注意点です。
自己資金の割合とフルローンの実情
多くの方が特に気にされているのが、「頭金はどのくらい必要か」「フルローンは可能か」という点です。アパートローンの頭金の目安として、「物件価格の1〜2割、余裕があれば3割」という記述が複数のメディアで共通して見られます。そして、「フルローンは以前より難しくなっている」という論調も、ほぼ一致しています。
ここで大切な整理があります。フルローンが通ったとしても、「自己資金ゼロ」を意味するわけではありません。仲介手数料、登記費用、不動産取得税、ローンの諸費用などが別途かかり、物件価格の数%から1割程度は、現金で用意が必要になると言われています。物件価格分の融資が出たとしても、諸費用分の現金は手元に必要、ということです。物件価格に諸費用まで含めて借りる「オーバーローン」という方法もありますが、担保の評価額を上回る借入になるため、金利が高くなったり、審査が厳しくなったりする傾向があります。
フルローンが出にくくなった背景には、2018年に表面化した金融機関の不正融資問題(いわゆるスルガショック)を契機に、金融庁が各金融機関に審査の厳格化を求めた、という経緯があると言われています。
金融機関の種類ごとの特徴
金融機関の種類によって、融資に対する姿勢は異なる、と言われています。金融機関名は挙げず、「一般的にこう言われることが多い」という整理としてお読みください。
- メガバンク:低金利だが、個人の投資用融資には消極的とされる
- 地方銀行:審査の基準が比較的明確で、営業エリア内の物件が条件になりやすい。岡山県内でも、県内に営業基盤のある金融機関が、地元の物件を前提に検討するケースがあります
- 信用金庫・信用組合:地域に密着していて、金融機関ごとに姿勢の差が大きい
- 日本政策金融公庫:金利は低めと言われるが、担保の評価が厳しく、自己資金を多めに求められる傾向
- ノンバンク:属性より物件の収益性を重視する傾向があり、審査が速い反面、金利は高めになりやすい
金利の水準は、時期や個別の条件で変わりますので、ここでは数字を挙げません。「初心者のサラリーマンなら地方銀行が一択」という主張を見かけることもありますが、一個人の見解で、一般化できる断定ではありません。金融機関それぞれに一長一短があり、「ここが正解」とは言えないのが正直なところです。
1億〜3億円という価格帯のリアル
ここは、誠実さが問われるところだと思っています。投資家向けのアンケートなどでは、不動産投資を始めたときの年収は中間的な層が多く、購入している物件も数千万円までの区分マンションや一棟アパートが中心、という結果が紹介されています。私たちが扱う1億〜3億円の新築一棟アパートは、そうした中心的な価格帯よりも高い水準にあります。
ですから、「属性に自信がない方でも、1億円台の物件を気軽に検討できます」というような、安易な安心材料を示すつもりはありません。一方で、年収だけを見れば突出していなくても、勤務先の安定性や自己資金の準備状況によって、この価格帯の物件を検討できた方を、何人も見てきました。逆に、年収が高くても、ほかの借入や自己資金の状況で条件が変わった方もいます。年収の数字ひとつで可否が決まるわけではない、というのが、実務を通じての実感です。
属性に不安がある方が検討できる4つの選択肢
1.共同担保の活用
自己資金や物件の担保力が不足する場合、ご本人やご親族が所有する不動産を担保に追加する「共同担保」という方法があります。ただし、担保に入れた既存の不動産も、連動してリスクを負うことになります。ある程度の自己資金があることが前提になる場合も多く、「これを使えば属性の低さを帳消しにできる」という単純な話ではありません。
2.自己資金を厚めに用意する
頭金の割合を高める(2〜3割程度)ことで、属性面の不安があっても、審査が通りやすくなる、という一般的な整理があります。
3.ほかの借入を整理して、返済負担率を下げる
既存の借入を整理してから審査に臨むと、有利になりやすいという考え方があります。
4.物件の収益性・エリアで補う
物件の利回りやエリアの特性を見直すことで、属性面の不利をある程度補える、という考え方もあります。ただし、具体的にどこまで補えるかの根拠は薄く、一般論の域を出ません。
この4つのいずれにも、リスクや前提条件があります。属性に不安があるからと、最初から相談を諦めてしまう方もいらっしゃいますが、実際にお話を伺わないと分からないことも多いというのが実感です。個別の状況によって、選べる選択肢は変わってきます。物件選びについては「“木造は22年で価値ゼロ”と言われた人へ|新築×木造×地元工務店という選択」で、会社員の方の信用力を活かした融資にも触れています。
まとめ
- 年収・勤務先・勤続年数・自己資金などが、融資の条件に影響しうる。ただし、基準や倍率は業界内でも一言で言い切れない
- フルローンは以前より難しくなっているとされ、通っても諸費用分の現金は別に必要
- 属性に不安があっても、共同担保・自己資金・ほかの借入の整理・物件選びといった選択肢がある。ただし、それぞれにリスクと前提条件がある
属性が高ければ有利、低ければ不利、という単純な話ではありません。属性は融資条件を決める一つの要素であり、それがすべてではない、というのが実務を通じての実感です。「自分の場合、この価格帯の物件に融資は組めるのか」「属性に不安があるが、選択肢はあるのか」。そんな点が気になる方は、お気軽にご相談ください。資料だけでも構いません。
※本記事は一般的な情報の整理であり、融資の可否や条件は、金融機関と個別の状況によって異なります。融資が受けられることや、利益が出ることをお約束するものではありません。不動産投資には、空室・家賃の下落・金利の変動などのリスクが伴います。
この記事の内容について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。



