【相続・空き家】特定空家に指定されないために|残置物と空き家放置の関係|岡山市の咲良不動産
岡山県で不動産会社を経営している畠中です。
実家を相続したものの、誰も住まないまま数年が経っている。岡山市中区・東区や赤磐市でも、そんなご相談を、これまで数多くいただいてきました。「いつか片付けなければ」と思いながらも、家財(残置物)の量に圧倒されて、なかなか手がつけられない。その気持ち、よく分かります。
「空き家のまま放っておくと、何かまずいことになるらしい」。そんな漠然とした不安をお持ちの方は多いのですが、具体的に何が、いつ、どう起きるのかまでは、意外と知られていません。「特定空家」という言葉を聞いたことはあっても、「うちがそうなるかどうか」「いつの段階で何が起きるのか」までは分からない、という方がほとんどです。
今日は、空き家を放置していると起こりうる「特定空家等」への指定というプロセスと、その過程で残置物(家財)がどう関わってくるのかを、実務で見てきた立場から整理してお伝えします。
なお、実家の遺品整理そのもの(何から手をつけるか、費用相場はどれくらいか)については、別記事「相続した実家の遺品整理、何から始めればいいのか|費用相場と進め方」で詳しくお話ししていますので、片付けの実務を知りたい方はそちらもあわせてご覧ください。本記事は、空き家という「建物・敷地」が制度上どう評価され、どのプロセスで特定空家に至るのかという、いわば行政・制度側の視点でお話しします。
そもそも「特定空家等」とは、どんな空き家を指すのか
「特定空家」という言葉は知っていても、具体的な基準まで知っている方は少ないと思います。空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)第2条2項では、以下のいずれかに該当しうる状態が、特定空家等の判断対象とされています。
- 保安上危険な状態。倒壊のおそれ、柱の傾き、外壁の崩落など。
- 衛生上有害な状態。ゴミの放置による悪臭、害虫・害獣の発生、排水設備の不備など。
- 景観を著しく損なう状態。繁茂した草木、割れた窓ガラスの放置、粗大ごみの大量放置など。
- 周辺の生活環境の保全上不適切な状態。立木の越境、不審者が出入りしやすい状態など。
ここで一つ、大切なことをお伝えしておきます。これらに該当すれば自動的に指定される、というものではなく、市町村が総合的に判断する仕組みです。「何割の空き家が指定されているか」といった数値については、裏付けとなる公的な統計を確認できていないため、ここでは触れません。大事なのは、割合の多い少ないではなく、「どんな状態が、どんな基準に近づいていくのか」という仕組みを知っておくことだと思います。
「特定空家」は、いきなり指定されるわけではない
ここが、今日いちばんお伝えしたいことの一つです。特定空家というと、「ある日突然、指定される」というイメージを持たれがちです。ですが実際は、いきなり指定に至るわけではなく、段階を踏んで進んでいきます。以下の4段階です。
- 1.助言・指導 ― 改善を促す通知。法的拘束力はない
- 2.勧告 ― 改善を求める正式な行政指導。固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が上がりうる
- 3.命令 ― 期限を定めた改善命令。正当な理由なく従わないと、50万円以下の過料の対象になりうる
- 4.行政代執行 ― 自治体が強制的に除却等を実施。費用は所有者に請求される。支払われない場合、財産の差押え・公売の対象になりうる
以前「売却事例⑤」でも、特定空家に指定されると固定資産税が最大6倍になりうる、という話に軽く触れました。ですが実は、税額に影響が出るのは「指定された後」だけではありません。表の②「勧告」の段階で、すでに固定資産税の住宅用地特例が外れうる、という点です。つまり、「特定空家に正式に指定されるまでは大丈夫」というわけではなく、その手前の勧告の時点で、すでに税制上の変化が起こりうるということです。ここは、意外と知られていない部分だと感じています。
実は、「特定空家」になる前の段階から、すでにリスクは始まっている
もう一つ、ぜひ知っておいていただきたい制度があります。2023年(令和5年)12月13日に施行された改正空家法により、「放置すれば特定空家等になるおそれがある空家等」を「管理不全空家等」として、市町村が指導・勧告できる制度が新たに設けられました。
「管理不全空家等」と「特定空家等」は、別の区分です。混同しないよう、ここで整理しておきます。
管理不全空家等。放置すれば特定空家等になるおそれがある段階。この段階でも市町村は指導・勧告ができる。
特定空家等。保安上危険、衛生上有害などの状態にすでに該当しうると判断された段階。
そして重要なのは、管理不全空家等の段階で勧告を受けた場合も、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が上がりうるという点です。「特定空家に指定されて初めてまずいことになる」というイメージをお持ちの方も多いのですが、2023年の改正以降は、その手前の段階からすでに行政の指導対象になりうる、という点を知っておいていただきたいと思います。
家の中に残ったもの(残置物)は、この判断とどう関係するのか
ここまで、特定空家等・管理不全空家等という制度そのものについてお話ししてきました。では、実家に残ったままの家財、いわゆる残置物は、この判断とどう関わってくるのでしょうか。
最初にお伝えしておきたいのは、「残置物があるだけで、即・特定空家に指定されるわけではない」ということです。残置物と管理不全の関係は、次のような仕組みとして捉えていただくのが正確です。
残置物(家財)が大量に残っていると、換気・通水が行われにくくなります。換気・通水が滞ると、室内に湿気がこもりやすくなります。湿気を家財(タンス・畳・布団・衣類など)が吸収し、カビや害虫(シロアリ・ゴキブリなど)の発生源になりやすくなります。こうした状態が、先ほどの4つの基準のうち「衛生上有害な状態」に近づく要因の一つになりうる、という流れです。
繰り返しになりますが、残置物があるだけで、即・特定空家に指定されるわけではありません。あくまで、管理が行き届かなくなる一因として関わってくる、という仕組みです。なお、部屋の中だけでなく、庭先や敷地に粗大ごみが大量に放置された状態は、「景観を著しく損なう状態」にも関わりうることに、軽く触れておきます。
「残置物を早く片付けたほうがいい」と思われがちですが、相続放棄を検討している場合は要注意です。家財(残置物)を売却・処分してしまうと、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるリスクがあります。この点は、別記事「相続した実家の遺品整理、何から始めればいいのか|費用相場と進め方」で、判断基準や注意点を詳しく解説していますので、相続放棄を少しでも考えている方は、先にそちらもご覧いただくことをお勧めします。
実際に代執行に至った、ある自治体の事例
制度の話だけだと、少し実感が湧きにくいかもしれません。2025年8月に報道された、福島県内のある自治体の事例をご紹介します(個人・所在地が特定されない範囲で一般化してお伝えします)。
対象になったのは、木造2階建ての店舗兼住宅でした。屋根の大部分が剥落し、外壁にも大きな亀裂が入るなど、倒壊の危険性があると判断されました。2022年12月頃、まず所有者への指導から始まりました。その後、勧告、命令と段階を踏んでいきましたが、改善には至らず、2025年8月、行政代執行が始まり、その後解体に至りました。かかった費用は約420万円で、解体後に所有者へ請求されたとのことです。報道によれば、所有者は「経済的な理由で」対応できなかった旨を説明していたとされています。
分かっていても動けない。そういう状況は、決して他人事ではないと思います。だからこそ、早い段階で状況を整理し、相談しておくことが大切だと感じます。
では、所有者として何ができるのか
ここまで、制度と実例をお伝えしてきました。最後に、所有者として日頃からできることを整理しておきます。
- 換気。目安として、月1回、1時間程度。湿気・カビの発生を抑える効果があるとされています。
- 通水。目安として、月1回、各蛇口を1分以上流す。排水トラップの水切れによる下水臭の逆流を防ぐ効果があるとされています。
いずれも、公的な統計基準というより、複数の空き家管理業者・サポートサービスが実務上の目安として案内している内容です。
シルバー人材センターの空き家管理サービスも一つの選択肢です。多くの自治体で、外観・敷地の点検、郵便受けの整理、草取り・簡易清掃などを有料で提供しています。岡山県内でも、岡山市・倉敷市・津山市など19市町村で利用できます。料金はセンターにより異なります(例: 岡山市の草取り1,155円/時間など)。詳細は各センターに直接ご確認いただくのが確実です。民間の空き家管理サービスという選択肢もあります。こちらも業者ごとにサービス内容・料金が異なりますので、必要に応じて比較検討していただければと思います。
これまで1000件以上のご相談に携わる中で、実家を空き家のまま数年放置してしまい、いざ相談にいらっしゃった時には、思っていた以上に管理が難しくなっていたケースを何度か見てきました。「まだ大丈夫」と思っているうちに、少しずつ状態が進んでしまう。これは、岡山市中区・東区や赤磐市のご家族にも共通して見られる傾向だと感じています。
まとめ
特定空家に指定されるのは、放置すればいきなり起こることではなく、助言・指導から始まる段階を経て至るものです。そして2023年の改正以降は、その手前の「管理不全空家等」の段階からすでにリスクが始まっています。
残置物の放置も、それ自体が直接の原因になるわけではありませんが、管理不全の一因になりうるものです。1000件以上のご相談を通じて感じるのは、早い段階で”今の状態”を把握しておいたご家族ほど、後になって慌てずに済んでいる、ということです。
実家が今どんな状態にあるのか、特定空家に指定されるリスクがあるのかどうか、ご自身では判断がつきにくいこともあると思います。岡山市中区・東区、赤磐市で空き家の管理や今後の方針について、まずは一度、公式LINEやホームページからご相談ください。
相続の全体的な進め方については「親の家を相続したらまず何をする?|期限と手順を岡山市の咲良不動産が解説」で、実家の名義変更を後回しにした結果起きたことについては「売却事例⑤」で、それぞれお話ししています。あわせてご覧いただけると幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事の内容について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。



