【不動産売却】売却事例⑥|「片付けてから」と先延ばしにした実家、査定額が下がった話|岡山市の咲良不動産
岡山県で不動産会社を経営している、咲良不動産の畠中です。
前回の「売却事例⑤」では、実家の名義変更(相続登記)を後回しにしたことで、兄弟間の同意という壁にぶつかったご家族のお話をしました。
今回は少し違う角度のお話です。名義変更ではなく、”家財・残置物の片付けそのもの”を後回しにしてしまったケースです。
岡山市中区や東区、赤磐市のあたりでも、実家に残った荷物をどこから片付ければいいか分からないまま、時間だけが過ぎてしまっているというご相談を、私は数多くいただいてきました。その気持ち、よく分かります。
実家じまいを経験した2,221名を対象にした、すむたす社の調査があります。そこでは、半数以上の方が「事前にやっておけばよかった」と後悔した経験があると回答しています。事前にしておくべきだったことの上位には、「処分費の確認」「親と一緒に片付けること」が挙がっていました。
先延ばしは、決して特別なことではありません。多くの人が同じように悩み、同じように後悔しています。だからこそ今日は、実際にあったご相談をもとに、”片付けの先延ばし”が何を招くのかをお話ししたいと思います。ご本人が特定されないよう、内容は一部変えてお伝えします。
あるご相談 ― “全部片付けてから”にこだわった岡田家のケース
岡田家のご姉弟(姉・50代、弟・40代、いずれも仮名)は、岡山市中区の実家をどうするかというご相談で、私のところにいらっしゃいました。
実家には母親が一人で暮らしていましたが、母親も他界され、父親はすでに他界していました。姉は岡山県内にお住まいで、仕事と家事に追われる毎日。弟は関東在住で、頻繁に帰省できる状況ではありませんでした。
母親が亡くなった直後は、葬儀や遺品整理の対応で、お二人ともとにかく手一杯だったそうです。
「いつか片付けよう」「気持ちの整理がついてから」。そんな思いのまま、実家の家財の片付けは、少しずつ後回しになっていきました。母親の持ち物に触れると、思い出がよみがえって、なかなか手が動かない。そういう時期もあったといいます。
一方で、実務的な話し合いも進みませんでした。「業者に頼むといくらかかるのか分からない」「どちらが費用を持つのか」。そうした話は、なんとなく切り出しづらいまま、宙に浮いていたそうです。
気づけば、2年半が経っていました。姉はこう話していました。
「全部片付けてからでないと、査定なんて頼めないですよね」
結果 ― いざ動こうとしたら、状況が変わっていた
重い腰を上げたきっかけは、固定資産税の通知と、近隣から「庭の草が伸びている」と指摘を受けたことでした。「さすがにこのままではまずい」。そう思って、姉が私のところへ相談にいらっしゃいました。
その際、私からこうお伝えしました。「今の状態のまま、査定だけでも先に受けられますよ」。岡田さんは驚いた様子でした。「全部片付けてから、と思い込んでいました」
実際に査定を受けてみると、空き家期間中に生じていた傷みが確認されました。換気が行われないまま時間が経ったことによる湿気やカビ、伸びた庭木などについて、担当者からは「老朽化や設備の劣化が査定にも影響している」という説明がありました。
また、家財が残ったままの現状渡しが前提になったことで、購入希望者側からすると心理的なハードルになりやすく、値下げ交渉の材料にされやすい状況でもありました。
結果として、当初想定していたよりも低めの査定額になり、内覧の反応も鈍く、成約までには想定より時間がかかりました。最終的には無事に成約に至りましたので、暗い話で終わったわけではありません。それでも、もっと早く動いていれば、選べた選択肢があったのも事実です。
後になって気づいたこと
岡田さんは、後からこう振り返っていました。
「”片付けてから”と思っているうちに、実は”いつまでに・誰が・何をするか”を何も決めていなかったんですよね」
「全部片付けてから、と思い込んでいたけれど、先に相談してよかったです」
「もっと早く、せめて最低限だけでも片付けて、一度査定だけ受けておけばよかったと思います」
そう率直に話してくれました。
なぜ、”片付けの先延ばし”がここまで条件を悪化させるのか
岡田家のようなケースが起きる背景には、いくつか理由があると感じています。
空き家は、人が住まないこと自体で傷みが進みやすい
換気や通水が止まることで、湿気やカビ、木材の傷みなどが進行しやすいという指摘は、複数の実務の場面でよく耳にします。このあたりの詳しいメカニズムは、「特定空家に指定されないために|残置物と空き家放置の関係」でお話ししていますので、気になる方はあわせてどうぞ。
「全部片付けてから査定を」という思い込みは、実は多くの人が持っている
岡田さんの発言にもあった「全部片付けてからでないと査定なんて頼めない」という思い込み。実はこれ、岡山市中区・東区や赤磐市など、私のところに相談にいらっしゃる方の多くが、最初に持っている思い込みです。
でも、実際は違います。通路が確保できていて、貴重品や必要書類の分別さえ済んでいれば、査定や相談自体は、今の状態のまま進められます。大手不動産会社のサイトでも、片付けが完全に終わっていない段階での査定相談は、珍しいことではないと案内されています。
「全部片付けてから」ではなく、「まず現状のまま相談する」。この順番の違いが、後の選択肢の広さを大きく左右します。
片付けが進まない背景には、感情面・実務面・家族間の合意形成という3つの壁がある
感情面では、遺品に触れることへの迷いや、なんとなくの罪悪感を抱く方が少なくありません。実務面では、「時間の確保が難しい」という悩みが最も多いという調査結果もあります(葬研の調査では、100人中64人がこの悩みを挙げています)。家族間では、「費用を誰が負担するか」「誰が窓口になるか」という合意形成そのものが、ハードルになりやすいという傾向があります。岡田家のケースも、まさにこの3つが重なっていたケースでした。
なお、費用の相場については、「相続した実家の遺品整理、何から始めればいいのか|費用相場と進め方」で詳しくまとめていますので、そちらもご覧ください。
先延ばしという行動そのものは、誰にでも起こりうる
行動経済学では、将来の大きな利益より目の前の負担を避けることを優先してしまう心理を「現在バイアス」と呼ぶことがあると言われています。また、選択肢や情報を集めすぎることで、かえって決断できなくなる「決断疲れ」という考え方もあるようです。実際、クランピーリアルエステート社の調査では、実家の将来方針について「まだ決めていない」と回答した人が52.9%にのぼるという結果も出ています。先延ばしは、特別な人だけに起きることではありません。
査定額への影響は、断定できる数字はないが、不利に働きやすい傾向がある
正直にお伝えすると、「片付けの放置が査定額を具体的に何%下げるか」という公的な統計は、見つかっていません。ただ、老朽化や現状渡しという条件が、査定や交渉の場面で不利に働きやすいというのは、実務の感覚としても言えることです。岡田家のケースも、まさにそうした形で条件が積み重なっていったように感じます。
どうすればいいのか
- 「全部片付けてから」ではなく、まず現状のまま相談・査定を受ける。順番を変えるだけで、動き出しが早くなります。
- 査定のために最低限必要な片付けだけを、先に済ませる。通路の確保、貴重品や必要書類の分別。まずはこれだけで十分です。
- 処分費用のおおまかな相場感を、早めに知っておく。具体的な相場は、「相続した実家の遺品整理、何から始めればいいのか|費用相場と進め方」で確認できます。
- 姉弟・家族がいる場合は、「いつまでに」「費用をどう分けるか」を早い段階ですり合わせておく。話し合いを先延ばしにするほど、後で決めなければならないことが積み重なっていきます。
- 完璧を目指さず、”小さな最初の一歩”から始める。まず1部屋だけ片付ける。まず査定の電話だけしてみる。それくらいで構いません。
これまで1000件以上のご相談に携わる中で、”片付けが終わってから”とおっしゃって、数年経ってから相談にいらっしゃる方を、何度もお見かけしてきました。その多くが、後になって「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃいます。
まとめ
“片付けてから”という気持ちは、決して間違いではありません。ただし、それを理由に相談そのものを先延ばしにすると、選べる選択肢が狭まっていくことがあります。これが、今日いちばんお伝えしたかったことです。
もし今、実家の片付けが終わっていないことを理由に、相談や査定を先延ばしにしているようでしたら、片付けが終わっていない状態のままで構いませんので、一度公式LINEやお問い合わせフォームからご相談ください。岡山市中区・東区、赤磐市を中心に、今の状態での査定や、進め方の整理について、一緒にお話しすることもできます。
なお、片付け業者の選び方などについてご相談いただいた場合も、私どもで直接処分を請け負うことはできませんので、あくまで情報提供・選択肢の整理としてお付き合いできればと思います。
残置物が内覧や成約にどう影響するかについては、「”売れそうで売れなかった”その後|残置物処分は、いつ・どう進めればいいか」で詳しくお話ししています。空き家のまま放置することのリスクについては、「特定空家に指定されないために|残置物と空き家放置の関係」もあわせてどうぞ。相続の名義変更を後回しにした場合に何が起きるかは、「売却事例⑤」でお話ししています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事の内容について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。



