【不動産投資】「家賃保証」は、家賃の金額を保証するものではない|サブリース契約の仕組みと確認しておきたい落とし穴
岡山県で不動産会社を経営している、咲良不動産の畠中です。
「新築アパートを検討しているのですが、サブリースを付ければ家賃保証があるので安心です、と営業担当から言われました」。こうした声を、これまで何度もお聞きしてきました。
- 家賃保証と言われたが、本当にそのままの金額がずっと入ってくるのか
- 契約書の中身まで自分で読み解く知識がなく、どこを確認すればいいのか分からない
- サブリースを付けるべきか、自主管理や一般管理にすべきか、判断がつかない
- 過去のニュースを見て、漠然と怖いと感じている
その気持ち、よく分かります。以前「新築×木造×地元工務店という選択」の記事の中で、家賃保証やサブリースは契約内容によってメリット・デメリットが大きく変わるため、一律に良い・悪いとは言えない、とお伝えして、話を保留にしていました。今日はその続きです。
先にお伝えしておくと、今日は「サブリースは絶対に危険です」「絶対に安全です」という話をしたいわけではありません。仕組み、メリット、見落とされがちな落とし穴を整理して、契約書のどこを確認すればよいかが分かる状態を目指します。サブリースの是非よりも、契約の中身を理解しないまま契約してしまうことが、後悔につながりやすいと感じています。
そもそもサブリースとはどういう仕組みか
サブリースとは、サブリース業者(管理会社)がオーナーから物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する仕組みです。オーナーと業者との間の契約を「マスターリース契約」、業者と入居者の間の契約を「転貸借契約」と呼び分けます。
「家賃保証」という言葉は、サブリースのうち「賃料保証型」を指す通称として使われることが多いものです。空室や滞納があっても、オーナーには契約で定めた一定額(保証賃料)が支払われる方式です。これに対して、実際の入居者からの家賃収入がそのままオーナーに渡る「パススルー型」という方式もあります。こちらは空室や滞納のリスクをオーナーが負う代わりに、管理会社は手数料のみを受け取る仕組みです。
保証賃料の水準については、入居者が支払う家賃総額の一定割合(民間のメディアでは8〜9割程度という記述が見られます)とされることが多いようです。ただし、これは民間のメディアの記述で、公的な統計に基づくものではありません。実際の水準は、契約ごとに異なります。言い換えれば、サブリース業者の取り分(手数料)は、通常の管理委託の手数料より高めに設定されるのが一般的だとされています。
なお、表面利回りとサブリースの保証賃料は、別の数字です。「利回り7%の物件だから、家賃も7%分そのまま入ってくる」というものではありません。利回りの見方は、「表面利回り7%は高いのか低いのか?」でお話ししています。
サブリースのメリットとして、一般的に語られること
- 空室・滞納リスクの吸収:入居者がいなくても、契約で定めた保証賃料が支払われるため、収支計画が立てやすいとされます(ただし、免責期間や見直し条項がある点は後述します)
- 管理の手間の軽減:入居者募集、クレーム対応、原状回復といった賃貸経営の実務を、業者に任せられます
- 収支の見通しの立てやすさ:遠方に住むオーナーや、本業が別にある兼業のオーナーにとって、毎月の収入が一定額で見込めることは、返済計画の立てやすさにつながる、という説明が一般的です
これらのメリットが嘘だというわけではありません。ただし、この安心には、見落とされがちな条件がいくつかあります。ここからが、今日の核心です。
見落とされがちな6つの落とし穴
1.「家賃保証」は、金額の保証ではなく、契約継続の保証に近い
多くのサブリース契約には、2年ごとなど、定期的な賃料の見直し条項があります。「30年家賃保証」という言葉が、30年間同じ金額が保証されることを意味するわけではない、という指摘は、多くのメディアや専門家に共通しています。
これには、法律上の裏付けもあります。借地借家法32条には、賃料増減額請求権の定めがあります。土地建物の価格の変動や、近隣の同種の建物の賃料との比較などから賃料が不相当になった場合、当事者は将来に向けて賃料の増減を請求できる、という規定です。そして、サブリース契約にもこの32条が適用されることを、最高裁が認めた判例があります(最高裁 平成15年10月21日判決)。この判決は、賃料減額請求の当否を判断する際に、契約締結時の経緯や、賃料の決まり方なども総合的に考慮するべきだとしています。
つまり、「30年一括借り上げ」「家賃保証」という契約書の文言があっても、法律上は、サブリース業者側から賃料の減額を請求できる場合があり、特約でこれを完全に排除することは難しいと解されています。
2.免責期間
空室保証と謳われていても、入居者募集の開始時などに、一定期間、保証賃料が支払われない「免責期間」が設けられている契約があります。長さは契約ごとに異なりますので、ご自身の契約書で確認が必要です。
3.オーナー側からの中途解約が難しい
サブリース契約では、法律上、オーナーが貸主、サブリース業者が借主という関係になり、借地借家法上は、借主である業者側が保護される立場になります。オーナー側から解約を申し入れる場合、申し入れから6か月の経過が必要で(借地借家法27条)、さらに正当な事由が必要になります(同法28条)。契約書に「オーナーはいつでも解約できる」という趣旨の記載があっても、正当な事由なく貸主から解約できる特約は、判例上、無効と解されています。実際には、法律の要件を満たさないと、オーナー側から一方的に解約することは難しい、ということです。
4.修繕・リフォームの指定業者制
契約の中に、修繕工事を管理会社の指定する業者以外に発注できない条項があり、相場より割高な修繕費になるケースがある、という指摘があります。
5.いわゆる「逆ザヤ」という指摘
入居者から実際に得られる家賃の相場よりも高い保証賃料を提示して、物件価格の割高さを覆い隠す手口がある、という指摘が、サブリースのトラブルを専門に扱う弁護士などから発信されています。これは特定の専門家の見解や個別の事例の集まりで、業界全体の統計ではないことを申し添えておきます。
6.売却時の障壁
サブリース契約が付いたまま物件を売ろうとすると、買い手の候補が保証賃料の減額リスクを織り込んで価格交渉をしてきたり、契約の解除が売却の条件になったりするケースがある、という指摘もあります。
保証賃料が周辺の相場と見合っているかどうかは、エリアの実勢家賃の把握が前提になります。エリアの見方は、「岡山市内でアパート経営を始めるということ|エリア選びと賃貸需要の考え方」でお話ししています。
法律・制度による保護の仕組み
ここまで読んで、不安になった方もいらっしゃるかもしれません。ただ、こうしたトラブルを受けて、国も対策を講じてきています。2020年12月15日に、賃貸住宅管理業法(いわゆるサブリース新法)が施行されました。この法律には、大きく3つの柱があります。
- 不当な勧誘行為の禁止:契約の勧誘にあたって、家賃の減額リスクなど、相手の判断に影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げない、または不実のことを告げる行為が禁止されています
- 誇大広告等の禁止:家賃の支払いや契約変更に関する事項について、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示が禁止されています
- 契約締結前の重要事項説明:マスターリース契約を結ぶ前に、家賃や契約期間などを記載した書面を交付して説明することが義務づけられています
この法律の背景として、国土交通省の資料でも、サブリース方式では家賃保証などの契約条件の誤認によるトラブルが多く発生している、という認識が示されています。消費者庁も、サブリース契約のトラブルについて注意喚起を行っています。制度ができたということは、それだけ実際にトラブルが起きてきた、ということでもあります。
時事的な話題 ― 「2025年問題」と過去の事例
サブリースをめぐっては、「2025年問題」という言葉が語られることがあります。2015年の相続税の改正(基礎控除の引き下げ)をきっかけに、相続税対策としてのアパート建築とサブリース契約が増えたとされ、契約から約10年が経った2025年前後に、多くの物件が家賃の見直しのタイミングを迎える、という論調です。ただし、これは国の統計に基づく確定的な予測ではなく、民間メディアなどで語られている論調です。また、新築で購入される収益アパートは、当時の相続税対策ブームで建てられた物件とは、建築の背景も目的も異なる場合がありますので、過度に不安にならないでください。
もう一つ、過去には、利回りの高さと長期の家賃保証を掲げた、サブリース形式のシェアハウス投資をめぐって、多くの投資家が被害を受けたと報道されたことがありました。このような出来事が、制度の整備を後押しした社会的な背景の一つとされています。
サブリースを検討するとき、契約書で確認したいこと
ここまでの内容を、契約書を確認するときのチェックリストにまとめます。
- 賃料の見直し条項は、何年ごとに、契約書のどこに書かれているか
- 免責期間の有無と、その長さ
- 中途解約に関する条項(違約金や正当な事由の扱い)
- 修繕・リフォームの発注先に、指定業者の制限があるか
- 保証賃料の算定根拠について、周辺相場との比較の説明を受けたか
- 重要事項説明書の交付と説明を受けたか(登録業者の義務です)
このチェックリストは、「自分で全部判断してください」と突き放すためのものではありません。ここまで確認したうえで、分からない点を専門家と一緒に見ていく、という進め方が現実的です。
サブリースか、自主管理か、一般管理か
管理の方式には、大きく分けてサブリース、自主管理、一般管理(委託管理)の3つがあります。
- サブリース:空室や滞納があっても保証賃料が入る。手数料は高めになりやすく、契約内容の確認が特に重要です
- 自主管理:手数料はかからないが、入居者募集や対応をオーナー自身が行う必要があります
- 一般管理(委託管理):管理業務は委託するが、家賃収入は実際の入居状況に応じて変わります。手数料はサブリースより低めのことが一般的です
「管理の手間を減らしたい」「収支の見通しを立てやすくしたい」という目的には、サブリースが合う場合があります。一方で、保証賃料の水準や解約条項に納得できるかを確認したうえで選ぶべきもので、一律にどれが優れているとは言えません。サブリースを選んだ方も、選ばなかった方も見てきました。大切なのは、契約内容を理解したうえで、ご自身の状況に合わせて選ぶことです。
まとめ
サブリースの仕組み、一般に語られるメリット、そして見落とされがちな6つの落とし穴(賃料の見直し・免責期間・中途解約の難しさ・指定業者制・逆ザヤ・売却時の障壁)をお話ししました。サブリースは、絶対に危険とも、絶対に安全とも言い切れません。契約内容を理解したうえで、ご自身の状況に合っているかどうかを判断することが大切です。
咲良不動産は、サブリース商品そのものを扱う管理会社ではありません。仲介の立場から、中立的に情報を整理し、契約書の内容を一緒に確認するお手伝いをしています。「自分が検討している契約は、どこを確認すればよいのか」「サブリースを付けるべきか迷っている」という方は、契約書をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報の整理であり、法律の解釈や適用は個別の事情によって異なります。具体的な契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。不動産投資には、家賃の下落・空室・金利の変動などのリスクが伴い、利益をお約束するものではありません。
この記事の内容について、もっと詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。



